マイネス子爵家の娘にもかかわらず、アルトリシアは父からも母からも、そして妹からも虐げられて育った。食事を抜かれ、外出には連れて行ってもらえず、子爵家で開かれる夜会の参加を許されないばかりか、部屋から絶対に出てくるなと閉じ込められる始末。挙句には気に入らないことがあれば容赦なく打ち据えられ、身体中にあざを作る羽目になった。顔が腫れ上がるまで殴られたのも、一度や二度ではない。

 だから彼女は、廃鉱の暗い穴に突き飛ばされてしまった。どこから地上へ戻ればいいのかもわからず、すんと鼻を鳴らす。

(おかしいって思えばよかった)