甲高い笑い声が逃げるアルトリシアの背中を追いかける。

 息を切らして走る彼女の真横を、握りこぶしよりひと回り大きい炎の球が通り抜けていった。ちり、という微かな音がした直後、髪が焦げる嫌な臭いが鼻をつく。

 頬に感じた熱にぎょっとしたのも束の間、少し先を花壇に火球が飛び込んだ。空に向かって咲いていた可憐な花が、残酷にも炎に呑まれて燃えてしまう。

 あとほんの少し位置がずれていたら、燃えているのはアルトリシアだった。

「いつまでもねずみみたいに逃げないでよ! 練習にならないでしょ!」

 再び魔石を握り締めて笑ったのは、アルトリシアの妹、メルニエラだ。