虐げられ幼女は、神子だろうと聖騎士パパ＆もふもふお兄ちゃんたちと平凡に生きたい

「今は執務室にいらっしゃいますよ。お嬢様が目覚めたと聞いたら、きっと安心なさるでしょうね。すぐ呼んできますから、ちょっとお待ちを……」

「その必要はない」

　涼やかな低い声が聞こえて目を向けると、厳しい表情の男が扉の前に立っていた。

　ゼノハルト様、と女性が名前を呼んだことから、彼こそがこの屋敷の主人なのだと悟る。

　引き結んだ唇と、微かに寄った眉間の皺が非常に威圧的な雰囲気を醸し出す男だ。一切の冗談も通用しなさそうな無表情を、銀よりもより硬質な白金色の髪が飾っている。彼はその長髪をひとつにまとめて結わえていた。女性的な結び方だが、不思議とよく似合っている。