そしてアルトリシアが目を覚ましてから十日が過ぎた頃、ようやく彼女の口もとに笑みが浮かぶようになる。

「いっぱい心配かけてごめんなさい」

「いい。気にするな」

 使用人たちともこれまで通り接せられるようになったアルトリシアは、いつものように様子をたしかめに来たゼノハルトへ言った。

「ティトは大丈夫……?」

「ああ。ルブがいろいろと教えているようだ」

「ルブが?」

「サフィからそうするよう言われたらしい」

 ゼノハルトはあの日のルブについて説明し始めた。