間違いなく自身の腹部を突いた爪が、不思議な力によって拒まれる。娘に渡されたお守りが淡く発光するのを見たゼノハルトは、思わずうめくように彼女の名を呼んでいた。

 今も恐ろしい思いをさせているというのに、幼い娘に守られてしまった自分への情けなさと怒りから、虚を突かれている魔獣に駆け寄り、地面を踏みしめて飛び上がる。

 渾身の力を込めて突き立てた剣は魔獣の頭を深々と貫いた。どう、と巨躯が地面に倒れ伏す。獣は、ゼノハルトに仕留められるまで多くの人々の命を奪った。だが、これでもうその爪は誰も害さない。

 ゼノハルトは騎士たちの視線に気づかないまま、薄くにじんだ汗を軽く拭い息を吐いた。