騎士たちは息を呑んでいた。

 あれほど苦戦した魔獣が、たったひとりの手で翻弄され、屠られる。赤い猿のような魔獣は力を持たない住民だけでなく、騎士たちをも蹂躙したが、今は殺戮者から獲物へと変わっていた。

「あれが聖騎士ゼノハルトか……」

 ひとつにくくった銀の長髪が閃光のように走った。

 ゼノハルトが渾身の力を込めて剣を振るうと、肉を断つ感触が手に広がる。

「くっ……」

 今一歩及ばず、暴れた魔獣が長い爪を伸ばした。

 ちょうど剣を振り下ろしたゼノハルトの防御は間に合わない。だが、魔獣の爪は彼の身体を貫かずに弾かれた。

「……アルトリシア」