アルトリシアが目を覚ましたとき、そこにはまったく知らない天井が広がっていた。

(どこ、ここ……?)

 起き上がろうとすると、身体中のあちこちがズキズキと痛んだ。その痛みがこれが夢ではないと教えてくれるも、余計に現状が理解できず戸惑う。

 今度はおそるおそる顔を上げて周囲を見回した。清潔感のある白を基調とした過ごしやすそうな部屋だ。虐げられていたとはいえ、子爵家で育ったアルトリシアにはわからなかったが、見る者が見ればここが地位のある人間が生活する屋敷の一室だと察するだろう。

(家じゃない……。サフィたちは?)