――王都に魔獣が現れた。

 一報を聞き、真っ先に反応したのはゼノハルトだった。

「サフィ、ルブ。アルトリシアと殿下を頼む」

「待って!」

 立ち上がり、外へ向かおうとする父にアルトリシアが左の指輪を抜いて渡す。

『おい、ちび』

「サフィを連れて行って!」

 アルトリシアがサフィを差し出したのは、右利きなのもあり、左の指輪を抜く方が早かったからだ。ゼノハルトは部屋を出る前に娘を振り返り、硬い顔つきで指輪を受け取る。

「なにかあったらルブに連絡するよう言ってくれ」

「うん。パパも気をつけてね」

「ああ」

 そうしている間に、ファイスも立ち上がってあとに続く。