「本気で言っているわけではあるまいな。コヌジオに手出しさせる口実を与えるだけだ」

「そして神子と一緒に優秀な聖騎士まで手中に収められるわけだ。恐ろしいな」

 ゼノハルトはファイスの軽口を肯定も否定もしなかった。

「それより、ついでに気になる話を伝えておこう」

 ファイスが空気を変えるように明るく言う。しかし、遊び始めた子どもたちには聞こえないよう声をひそめた。

「最近、妙な動向をする貴族が目につく。不審な金の流れがあると報告があってね」

「私はもう城の騎士ではない。辺境の領主でしかないものを、なぜそんな……」

「マイネス子爵がかかわっている、という話がある」