ゼノハルトがアルトリシアのために用意した練習用の魔石は膨大な数に及んだ。

 もともと、ミラルドは多くの魔石鉱を所有する国である。産出される魔石が非常に良質なのもあって隣接する軍事帝国のアッキア、魔法大国のコヌジオから虎視眈々と狙われている。両国から表立った戦争を仕掛けられずにいるのは、片方がもう一方を牽制するという微妙な均衡のもとで平和を成り立たせているためだ。アッキアが攻撃を仕掛ければコヌジオが恩を売るために動き、また逆もしかり。

 そんなミラルドの鉱山はエクレル領にもあった。もっともここは既に掘り尽くされた廃鉱がほとんどで、現在も稼働している場所は片手で数えるほどしかない。