穏やかなゼノハルトの低い声も余計に眠りを誘った。

 アルトリシアは小さなあくびを漏らし、最後の力を振り絞って彼の袖を引く。

「あのね、魔石が使えるようになったの」

「ああ、言っていたな」

「だからね、石……いっぱい欲しい……」

「練習用に使うものという認識でいいのか」

 こくりとアルトリシアの首が動く。それと一緒にまぶたが閉じた。

「特別なんだって。パパにもあげる……ね……」

 ほとんど声にならなかった語尾が消えて寝息に変わる。

 ゼノハルトはアルトリシアの前髪をなでつけて、そこにそっと口づけを落とした。

「おやすみ、アルトリシア」