虐げられ幼女は、神子だろうと聖騎士パパ&もふもふお兄ちゃんたちと平凡に生きたい

 アルトリシアは今の状況が理解できずに、不安を覚えながら男を観察した。

 思わずため息をつきたくなるような美しい青い瞳。短い髪もまた、狼と同じ色をしていた。唇の端が常に引き上げられており、飄々として掴めない印象を与える。

 そして最も違和感を覚えるのは、その耳だ。通常、人間の耳がある位置は髪で隠れ、代わりに頭上に柔らかそうな獣の耳が生えている。

 おかしいと気づいたアルトリシアの視界の端でなにかが揺れた。ぎょっとしたのは、男の背後で動くこれまた獣のものとしか思えない尾のせいである。

「あ、あなた、誰」

 男に対する多くの疑問を抱きつつ、アルトリシアは震える声で話しかけた。