普段は休憩のために用意された椅子を使うが、彼らが姿を見せている間はその身体に埋もれさせてもらっていた。ふたりはどちらがアルトリシアの椅子になるかでときどき揉めたが、今日の勝者はサフィだった。

(あったかくて気持ちいいなぁ)

 読んでいた本を閉じて、日光にきらめく青銀の毛並みに顔を埋める。ふわりと顔を包み込む温かさは、今やアルトリシアの生活に欠かせない。

 もふりもふりと手を這わせ、内側の毛に触れる。サフィの毛は風を受ける外側のものと、体温を保つためだと思われる内側のものに分かれている。より柔らかく触り心地がいいのは中にある毛だ。

「くすぐってェ」

「もうちょっとだけ触らせてー」