ゼノハルトはそれを確認したあとに、ようやく剣から手を離した。どんな戦場でも強張らなかった手が、極度の緊張のせいか硬くなっている。自身を落ち着かせるように息を吐くと、汗が背中を伝っていった。

 サフィはなにを知っているのか。そしてアルトリシアは自分がなにを友達と呼んでいるのかを理解しているのか。

(私もまだ鍛錬が足りんな)

 どんな敵を前にしようと平常心を失わず、常に普段の自分を保つよう教えられ、実際にそう生きてきた。そのゼノハルトが本能的に恐れを感じ、手を震わせる。

 肝心のアルトリシアはぐっすりと眠っていた。