「……アルトリシアを大切に思うなら、この子に血を見せるような真似をするな」

「変わった命乞いだなァ」

「命乞いではない。私の命が欲しければ、アルトリシアの目の届かないところで奪え」

「別に欲しかねェ」

 くぐもった笑い声を漏らし、サフィはゼノハルトに引き裂こうとしていた爪を引いた。首筋にひと筋赤い線が走る。

「利用しようとは思うなよ。いつでも見てるからな」

 青銀の狼はそう言い残すと再び溶けて消えた。ふと目を向けると、アルトリシアの左手に指輪がある。