虐げられ幼女は、神子だろうと聖騎士パパ&もふもふお兄ちゃんたちと平凡に生きたい

 目の前で魔獣同士が激しく争っている。人を襲うという話は聞いているが、魔獣が魔獣を襲うという話は耳にした経験がない。

 考えようにも体力の限界を感じていたアルトリシアの前で、やがて白い獣は手ひどく痛めつけられてその場から逃げ去った。残った狼が振り返り、蒼玉のような美しいきらめきの瞳が彼女を捉える。

 どちらにせよ、魔獣に食らわれて命を落とすのだ。

 そう観念したアルトリシアが再び目を閉じると、生暖かい感触が頬をくすぐった。

「っ、ひゃ」

 狼が甘えるように鼻を押し付け、アルトリシアを舐める。

「や、やだ、やめて」

 悲鳴を上げて逃げようとするも、身体が軋んで身動きが取れない。