虐げられ幼女は、神子だろうと聖騎士パパ&もふもふお兄ちゃんたちと平凡に生きたい

 アルトリシアは子犬を抱えて再び庭園をさまよい始めた。ときどき、子犬が「そっちじゃないよ」とでも言うように彼女の服を噛んで引っ張る。

 同じところを回っているのではないかと思い始めた頃、アルトリシアの耳にすっかり聞き慣れた声が届いた。

「アルトリシア、どこだ」

(ゼノハルトさんだ!)

 周囲は生垣に囲まれて、父の姿が見えない。声を頼りに走り、アルトリシアも自身の居場所を伝えるように声を上げる。

「迷子になっちゃったの! ここにいるよ!」

「声が近いな。この辺りにいそうだ」

 駆けていたアルトリシアの足が止まる。今、ゼノハルトは自分ではない誰かに向かって話しかけなかったか。