今日はアルトリシアの八歳の誕生日だ。

 それなのに彼女は今、冷たい廃鉱の地下で呆然と立ち尽くしている。

 幼さの残る柔らかな白い足には、つい先ほど双子の妹であるメルニエラによって突き飛ばされた際にできた痛々しい擦り傷があった。

 そう、彼女は誕生日祝いに自分だけの魔石を探しに行こうとうそぶいた家族の手で、この恐ろしい鉱山に落とされてしまったのだ。

(こんなにいらない子だと思われてるなんて知らなかった)

 ズキズキと痛む足を押さえ、アルトリシアは湿った土の壁に背を預ける。じわりとにじんだ地下水の冷たさなど、胸を満たしていく絶望と悲しみに比べればぬるいものだ。