「なん…で…?」



それは、神城奏…。



彼女はいないってスズナちゃんから聞いたことあったけど、女の人といる…。



でもそんなことより、瞬時に「やばい!」と思ったあたしはさっと顔を伏せて、彼氏の陰に隠れた。



彼氏の方はあたしのその行動には特に興味なさそうだ。



神城に、バレてない…よね?



バレるわけがない…はず。



あたしがこんなところにいるなんて誰も思わないに決まってるもん。



っていうか、なんか口調もいつもと違うし、神城じゃない可能性もある…。



神城の双子…とか?



そんな話聞いたことないけど。



恐る恐る、ゆっくりと顔を上げ、男の方を見た。



瞬間、目が合った。



心臓がひゅっとひっくり返って冷える。



そして…あろうことか、そいつはあたしを見て、ニコッと微笑んだ。



あたしのテスト用紙を拾ったあのときと同じ笑顔…。



あたしは完全に硬直。



いやいやいや、大丈夫、な、はず…。



可愛いあたしと目が合ったから思わず笑っただけだよ、きっと…。



一方の神城っぽいその男は、あたしに背を向けて扉側を向き、階数表示を眺めてた。



その日のあたしは上の空。



彼氏に「つまんねえ」と言われる始末。



ひどくない!?



つまんねえのはあんたのエッチだろ!



でもそんなことどうでもいい。



あれが神城で、あたしだとバレてたらまじでやばい。



あたしの高校生活が瞬時に地獄と化す…。



彼氏とホテル前で別れて、バレてたらどうしようかと頭を抱えていたら、スマホに通知が来た。



もしかして神城!?



完全に疑心暗鬼になってるあたしは、あたしの連絡先なんて神城が知ってるわけがないのに通知一つにもビクビク…。



スマホを開くと、ママからだった。



ほっ…。