「一回遊んだ女が付き合ってってしつこいからお前、彼女役な」

「はい?」

「彼女いるって言っても信じねえんだもん」



大変ですねえ…。



よくわかんないけど、「とにかく、お前彼女役してくれたらいいから」と言う神城に着いていった。



こんなラブホ街を神城と歩いてるのを高校の誰かに見られたらそれこそ終わるな…。



9月も終わりにさしかかり、少しだけ肌寒くなってきた。



「くしゅんっ」



あ、くしゃみ…。



気にせず歩いてたら、肩にふわっと何かがかかった。



「これ着とけ」



見ると、神城のブレザー。



神城の匂いだ…。



あったかい…。



「優しいとこもあるんだね」

「お前は俺を悪魔かなんかだと思ってんのか?」

「悪魔そのものじゃん…」

「うっせえな、お前の秘密バラすぞ」



黙りまーす。



この前のホテルの近くの公園まで行くと、女の人が一人。



神城を見つけて大きく手を振ってから、隣のあたしに気がついて険しい顔をした。



てか、この人、この前ホテルで遭遇した人だ。



合流するなり、女の人は神城に詰め寄ってあたしを指さした。



「誰? この女」

「俺の彼女」

「はあ!? 彼女いるって本当だったの? しかもこんな可愛い子…」



可愛いだって。



可愛いよね。あたしもそう思う。



「そういうことだから。悪いけど諦めて」

「結局顔なわけね。もういい」



女の人はそう言って、奏の顔を思いっきり殴った。



…殴った!?



あまりにナチュラルに事が起きて、一瞬何が起きたかわからなかった…。