「あ、てか、そう。山田さんが体調不良で欠員出ちゃってんだよね。美乃里、少しの間ヘルプお願いできないかなって」

「本当申し訳ない、ふたりの邪魔したくないんだけどさ!!」

とさゆちゃんと萌ちゃん。

まじですか。それはすぐ行かなくては。

「水牧くん、今日は本当に……」

「ん。行っといで」

あんまり優しく言うもんだから、さらに名残惜しくなってしまう。

けど……。

「じゃあね、」

そう言って、振り返った瞬間。

「美乃里ちゃん」

「えっ、」

フワッと甘い香りが鼻先をくすぐったかと思えば、

後ろから優しく肩を掴まれたまま、

「明日のアズコン、頑張ろうね」

耳元でそう囁かれた。

……耳が、熱い。

放心状態になってゆっくり振り返った時には、水牧くんの背中は見えなくなっていた。

「何あれーー!!」

一部始終を見ていたさゆちゃんと萌ちゃんがそう叫んで。

そのあと私は初めて、水牧くんとのことや自分の気持ちをふたりに話すことになった。