(……)
言葉は次第に出なくなっていた。
まさか、ざまぁざまぁと人の不幸を娯楽のように面白おかしくふざけていた聖威に、そんな壮絶な過去があったなんて、思いもしなかったからだ。
私の傷ついた過去なんてちっぽけなものだと思えるぐらい。
しかも……貴族のお姫様なのに、一族の仇を捕まえるために、自ら異世界にやってくるなんて。
(……強い)
悲しみに打ち拉がれる間もなく、前を向いている。今、やるべき事を自らの手で成そうとしているのだ。
聖威は前を向いているのに。
私は……過去、私のせいで老師を失ったことで、親の言いなりになって、夢を諦めて。
言いなりになった結果が、冤罪をかけられ、婚約破棄されて、親にも見捨てられて追放。
その結果を……ただ、嘆いているだけ。
そう思うと、起こったことをただ嘆くだけの自分が、凄惨な過去を背負った聖威と比べて、とても恥ずかしく思えた。
(私も……)
ただ嘆いているだけじゃ、何も始まらない。
この手で、この思いで。現状を打破しなければならなかったのだ。
……そして今、その機会がある。