(色事……あっ)



翼の一言で、ふと思い出される一件があった。

それは、私が僅かに感じた、私だけが目撃した『違和感』ともいえる。

(で、でもこれは……)

違和感を感じたとはいえど、口にするのには多少躊躇った。……それは、敬うべき主の事だから。

だが、自分の命がかかっているし、そうも言ってられない。

私はその『違和感』を、意を決して伝えることにした。




「ーーえ?韋駄天様が、若い女性を城内に?」

「……はい。事件の三日前でしょうか」




それは、三日前の丑三つ時という夜更けの頃だった。

城内の全ての者が既に寝床に着き、就寝してるであろう時間。

そんな時間に、私は眠りからふと目が覚めてしまった。

しかも、一度覚醒するとなかなか寝付けなかったのだ。その日は。

取り敢えずお手洗いにでも……と、部屋を出て城内を歩いていた時のことだった。



小さな灯りはあるもの、ガランとした薄暗い城内の廊下。

人一人居ない……と、思っていたのだが、私はそこで意外な人物を目撃することになる。

その人物だけでも驚くべき事態なのだが、更に驚かされたのは、傍に同伴していた者だった。