だが、私は聖威の発言を耳にしてハッとしたのは、言うまでもない。

やってもいない罪……私があの毒殺未遂の犯人ではないとわかっているの?

誰もが韋駄天様の言葉通り、私を犯人だと信じて疑わなかったのに。

私が犯人ではないと……言ってくれるの?



「舞空嬢、申し訳ない。気持ち逸ったようだ。まず、自己紹介でもしようか。……私の名は竜樹。八部衆が一人、竜王の第二子であり、【水帝天導師】の名を預かって公務に従事している神術士です」

「は、はい……」

存じております……。あぁ、そんな深々と頭を下げないでください。恐縮です。

しかし、横で聖威が「ぶっ!『私』とかってキモくね?畏まっちゃって!」と吹き出し笑っている。

それに乗っかるように、翼が「ついでにスケコマシー!」と揶揄っている。

竜樹様が「……やかましい!」と怒り返していた。はて。



そんな竜樹様は、気を取り直して話を続ける。



「でも、公務というのは、天導師としての表向きの公務だけじゃないんだ、実は。それが今回の件」

「え?」

「天帝様の天命により動いている。謂わば特命に従事してるんだ」

「天帝様の特命……!」