後宮……かつての天帝様の側妃、寵姫のお住まい。
現在は、天帝様の妃は舎脂様お一人なので使用されておらず、閉鎖されている。
何故、そんな場所に?
後宮は、私のいた客室とは別の棟で、だいぶ距離がある。
逸る気持ちを抑えて急いで来たもんだから、
到着した時には息がきれていた。
後宮の入り口には、竜樹様が待っている。私の姿を見つけるなり、「こっちだ!」と手招きしていた。
「遅くなりました!みんなは?」
「大丈夫、今は出立準備の最中だ」
そう言われて、竜樹様の後に続いて、今は使用されていない後宮の中へと足を進めた。
しかし。お迎えが来るとか、出立準備とか言ってるけど。
聖威らはここからどうやって月輪界に帰るのか?
その答えは、足を進めていくとわかる。
「え……これは」
天井の高い後宮の大広間の真ん中に、見慣れない大きなものが聳えるようにドーンと置かれている。
丸い大きな金属の塊?しかし、丸型の窓がいくつかあしらってあって……乗り物?
この世界のものではないことは明らかだ。