場や会話の流れを考えていない、天王様の唐突な甘い言葉に、変にドキッとしてしまった。

こんな戦の場で、この話の流れで出る言葉じゃないよね。

言われた当の本人は、目を釣り上げてムキになっているけど。

この反応は当然か。



「と、ともかく!舞空をもう立たせるな。二人揃って隅に寄ってろ!」

「うん、わかったよ。君は本当に綺麗なんだから」

「……やかましい!」



怒鳴っては、赤面しながらキッと睨みつけている。どうやら多少の照れがあるらしい。

……そして、聖威は前に進んでいく。

私たちをその場に置いて。



「本当に、綺麗だと思ってるんだけどなぁ……その全てが」



前を向いて進んでいく聖威の背中を見つめて、天王様はボソリと呟いた。

「何もかも、神々しくて……」

穏やかな表情は崩れていないのだけど、少し寂しそうな目をしていると思うのは、私だけだろうか。



私も前に進む聖威の背中を見つめる。

しかし、異変に気付くのは間もなくだった。



ハッと息を呑んで、その様子を見守る。