と、そこで昔、老師に教わった知識が頭を過ぎる。

確か、魔力の浄化が処置に加わると、意識回復に時間差が生じることもある。なんて。

治癒完了したら、そのうち目が醒めるだろうとのことだ。

……あぁ、だけどそれじゃ、目が醒めるまでに何が起こるかわからない!



辺りをキョロキョロと見回すと。

まだ、魔獣がそこら辺を彷徨うようにうろうろしている。

それらがいつ襲ってくるかわからないのに!



回復は済んでいるのに、どうしよう。

まだ目が醒めない聖威を……目が醒めるまで守り抜くことが私に出来るのか。





未だ寝たままで無防御の聖威を腕に抱いて焦っている間にも、魔獣との戦いは続いていた。

少し離れたところでは、翼と架威が未だ互いの刃と魔力をぶつけ合っている。

何度も刃を振り下ろすが、魔力の塊で防御される。それを繰り返していた。

自分の黒い刀身で、魔力の塊とその向こうにいる架威をグッと押し付けながら、翼は言い放つ。



「……聖威はよ?あんたのこと、特級犯罪人に成り下がろうが何だろうが、結局たった一人の兄として情を向けている。だから、姫剣士の【紅蓮の炎】の脅威から、あんたを救ったんだ」