「……魔族は、人を喰らい力を付けるという話を知っているか?」
「……」
……それは、この世界の魔族に対する知識としては、常識だ。
魔族は人間や神族など『人』のカタチをしているものを、好んで喰らう。
空腹を満たすだけではなく、『人』が宿している霊力や神力を充填させ、生命を維持しているからだ。
その様は、想像しただけでも体が震える。人が食べ物のように喰いちぎられ、咀嚼されることを考えると。
「……だけどね?『人を喰らう』ということは、空腹や霊力を満たすだけではないということを、この身を以て理解したのだ、私は」
「……?」
「『力の譲渡』が出来る。魔族でなくても、魔力の、魔族特化の術式を使うことが出来て、神族でなくても神力を使うことが出来るようになったんだ……こんな風にね?」
そう言って架威が指を差したのは。
大広間の真ん中に浮かんでいる、今もなお魔獣が顔を出す、【紫の門】だった。
一瞬、何を言っているのかわからなかった。
しかし、その言葉を辿って脳内で何度も繰り返すと、段々その意味を理解してくる。
【紫の門】が登場した経緯を冷静に考えれば簡単にわかることだった。