「……姫!しっかりして下さい!」



未だグッタリとしている羅沙姫を抱き上げたその時、私は息を飲んだ。



(え……どうして)



羅沙姫は辛うじて息のある状態。

しかし、抱き上げて触れた時、とんでもないことに気付いた。

……姫様の体内の神力が、空っぽになりかけていたのだ。



あれ?……羅沙姫は、神力持ちではない、神力を使えないはず。

なのに、何で『神力が空になる』という状況になるの?

神力を使えないはずの……神力を表に出し入れ出来ないはずの羅沙姫の神力が、底を突きかけている。

……ひょっとして、今の『聖域』の炎で神力を使い果たしたの?……まさか、今のは神力の暴走になるの?!

常識のあり得ない事態に、頭が混乱しかける。

だが、何はともあれ、今、腕の中の羅沙姫は瀕死の状態であることは間違いないのだ。



(……治せるだろうか)



羅沙姫を抱き止める手に、力が入る。

私は無意識に、瀕死の姫を『助ける』という選択を取ろうとしていたのだった。