聖威がそう唱えて放った白金の光が、視界をも丸ごと一気に包み込む。

カッと発光しては、紅蓮の炎を連れ去るように、一瞬で全て打ち消したのだ。

触手の拘束から離れ、身体ごと打ち上げられた羅沙姫の姿が、光の隙間から垣間見える。

物事の展開の速さや、衝撃の事実。それに、初めて目にした大技に呆けて、私は頭の処理能力が追い付いていかなかった。



(奥義【相殺】……)



【相殺術式】とは。

神力の循環を全面に出して魔力に反応させる、魔力の分子変換だ。

結果、分子変換された魔力は粉々になり、その存在そのものをあっという間に消滅させられる。

……現在、魔力の塊である魔族を滅するのに、最も有効な奥義だ。

しかし、この【相殺】は難易度が高い。上級の神術士でも皆伝するのは難しい技なのだ。

私の実家、鳩槃茶大兵士団でも、皆伝して使えるのは老師と兵団長だけ。

実際に見たのは……これが初めてだ。



(……あっ!)



だが、現実に引き戻される。

聖威の切なる訴えが滲む、怒鳴り声によって。



「……兄上、こんなことはもうおやめ下さい!……罪を認めて投降して下さい!」