「な、何奴!」

「……」



侵入者に対し、兵士はシャリンと音を立てて腰の鞘から剣を抜く。

だが、光る剣先を向けられても、黒ずくめの侵入者は動じる様子もなかった。

それどころか……。



「……あーる晴れた、ひーる下がり、いーちーばーへと続く道ぃー♪」

「はっ……」



歌い出した。



「にーばーしゃあが、ゴートーゴォト、こーうーしーを乗せーていくぅぅー♪」



何の歌かはわからない。しかも、歌声からして、黒ずくめの正体は……女性?!

突然の一人舞台、新生の歌姫・蓮華様にも負けてない熱唱ぶりに呆気に取られるが。

侵入者の熱唱一人舞台に異様な空気が漂う。固まったまま経過を見守るしか出来ない。

だがそこで、歌声の主は伏せがちだった顔を突然バッと上げた。

不意だ。




「あああああぁーわぁーれーぇ!仔牛ぃーっ!売られていーくーよぉーっ!」

「……」



歌の山場だったのか?突然として大きくなった声量に、兵士と共に体をビクッと震わせてしまったのは、言うまでもない。



「さみーしそぉーなひーとーみーで、みーてーいーるーよぉー♪」