「……え? 雛菊!?」
涙をほろほろと流した親友の姿に目を剝く。けれど、彼女の視線の先には朽葉がいた。
「公隆さん、もうやめて。これ以上、罪を重ねる姿なんて見たくない……」
「裏切るというのか、夫となる私を!」
激高する未来の夫に、雛菊は負けじと言い返す。
「夫に従うのが妻の定め。けれど、わたくしの大事な友人の弟さんを貶めるような真似は許せません」
その言葉が引き金のように、彼女の左右から警官が出てくる。
「その男を捕らえろ!」
息せき切った警官たちは朽葉をすぐさま拘束し、地面に押し伏せる。取り押さえられた朽葉は恨み言をつぶやいていたが、複数の警官たちに連行されていく。
呆然と彼らの姿を見送っていると、反対方向から見慣れた男が姿を現した。
「よっ!」
「……篝さん。どうしてここに……あなたが通報を?」
「まあ、そういうこった。通り道でおろおろしているこのお嬢さんから話を聞き出して、警官と一緒にここで張っていたわけだ。もともと、朽葉警部は前々から怪しい行動があったから、気になって独自に調査していたんだ。結果はこのとおり」
「では、前に尾行していたっていうのは?」
「ああ。彼を張っていたんだ。犯行の下見をしていたようだったからな」
篝は雛菊のもとまで来て、そっとハンカチを差し出す。雛菊は悄然とうなだれており、目の前の白い布を力なく受け取った。
「大丈夫か? よく屋敷から抜け出せたな。あの口ぶりから監禁同然だったろうに」
「……ばあやに時間を稼いでもらって、窓から抜け出してきました。彼が罪を重ねる前に止めようと思って」
切々と答える様子が痛ましくて、絃乃は彼女のもとに駆け寄った。だが言葉をかけるより前に、雛菊が怯えたように体をびくつかせた。
「絃乃さん、ごめんなさい。弟さんを装って手紙を出したのは……」
「いいの、いいのよ。雛菊」
涙をためて罪を語ろうとする友人を抱きしめる。
「辛かったよね。私は大丈夫だから、もう何も心配しないで」
「……っ、……っっ」
絃乃は堰を切って泣き出す背中をなだめ、もう大丈夫、と繰り返した。
涙をほろほろと流した親友の姿に目を剝く。けれど、彼女の視線の先には朽葉がいた。
「公隆さん、もうやめて。これ以上、罪を重ねる姿なんて見たくない……」
「裏切るというのか、夫となる私を!」
激高する未来の夫に、雛菊は負けじと言い返す。
「夫に従うのが妻の定め。けれど、わたくしの大事な友人の弟さんを貶めるような真似は許せません」
その言葉が引き金のように、彼女の左右から警官が出てくる。
「その男を捕らえろ!」
息せき切った警官たちは朽葉をすぐさま拘束し、地面に押し伏せる。取り押さえられた朽葉は恨み言をつぶやいていたが、複数の警官たちに連行されていく。
呆然と彼らの姿を見送っていると、反対方向から見慣れた男が姿を現した。
「よっ!」
「……篝さん。どうしてここに……あなたが通報を?」
「まあ、そういうこった。通り道でおろおろしているこのお嬢さんから話を聞き出して、警官と一緒にここで張っていたわけだ。もともと、朽葉警部は前々から怪しい行動があったから、気になって独自に調査していたんだ。結果はこのとおり」
「では、前に尾行していたっていうのは?」
「ああ。彼を張っていたんだ。犯行の下見をしていたようだったからな」
篝は雛菊のもとまで来て、そっとハンカチを差し出す。雛菊は悄然とうなだれており、目の前の白い布を力なく受け取った。
「大丈夫か? よく屋敷から抜け出せたな。あの口ぶりから監禁同然だったろうに」
「……ばあやに時間を稼いでもらって、窓から抜け出してきました。彼が罪を重ねる前に止めようと思って」
切々と答える様子が痛ましくて、絃乃は彼女のもとに駆け寄った。だが言葉をかけるより前に、雛菊が怯えたように体をびくつかせた。
「絃乃さん、ごめんなさい。弟さんを装って手紙を出したのは……」
「いいの、いいのよ。雛菊」
涙をためて罪を語ろうとする友人を抱きしめる。
「辛かったよね。私は大丈夫だから、もう何も心配しないで」
「……っ、……っっ」
絃乃は堰を切って泣き出す背中をなだめ、もう大丈夫、と繰り返した。



