木枯らしが吹いて、窓がガタガタと揺れる。外の木々はすっかり冬支度になっている。赤や黄色に色づいた葉が半分以上、地面に落ちて寒々しくなっていた。
注文したお団子を食べながら、女学校での話題を一通り話を終える。次は雛菊の番だ。
「婚儀はいつなの?」
「二ヶ月後よ。今は花嫁修業の真っ最中。だけど、ずっと家にいるのも息が詰まるから抜け出してきちゃった」
「そうなの。でも、息抜きも必要よね」
絃乃が同意すると、苦笑いが返ってきた。花嫁修業も大変そうだ。
「だけど、絃乃さんとこうしてお話ができてよかったわ。思ったより元気そうだし」
「それはこちらの台詞よ。雛菊」
「言われてみれば、そのとおりね」
ふふ、と二人で笑い合う。この感じも久しぶりだ。まるで時が戻ったみたいだった。
(人妻になるのは家の責任を背負っていくということ。私はともかく、百合子もいずれそうなるのよね)
つい感慨深くなってしまうのは歳のせいだろうか。女学校卒業までが自由にできる期限だ。タイムリミットは長いようで短い。
別れ際が名残惜しく感じてしまうのは、自分だけではないはず。
けれど、いつもまで引き留めているわけにもいかない。雛菊は家に戻り、婚儀のための準備が山ほどあるはずなのだから。
「じゃあ、雛菊。元気でね」
「ええ。絃乃の顔が見られてよかったわ。またね」
柳の下で、彼女の背が小さくなるまで見送る。まっすぐに帰る雛菊は背筋をピンと伸ばし、落ち着いている。いきなりの退学で心配していたが、なんとか大丈夫そうだ。
(さて。私も帰ろう……)
数歩歩いたところで、ふと、袂に違和感を覚える。
腕を持ち上げたり下げたりしてみる。かすかな重みがして袂の中を探ると、結び目のある手紙が出てきた。
「付け文……? 一体、いつかしら」
朝にはなかった。だとすれば、帰り道のどこかで、ということになる。とりあえずは中身の確認からだろう。慎重に折りたたんだ紙を開き、絃乃は文字を二度読み返す。
(こ、これは……)
葵からの手紙だ。文字が少々いびつなのは急いで認めたせいか。
「二人きりで相談したいこと……」
指定されたのは廃寺となった場所だ。確かに、あそこなら人目にもつかないし、内緒話にはうってつけだろう。
しかし、待つと書かれた時刻はもうすぐだ。今すぐ行かなければ間に合わない。
(詠介さんに相談する時間もない……どうする?)
だが、この機会を逃してはならないと直感が訴えている。罠の可能性もある。けれど、もしそうでなかったら。葵が本当にこの手紙を送ってきたのだとしたら。
もう二度と会えない可能性もあるのではないか。そう思ったら、いても立ってもいられなくて絃乃は急いで踵を返した。
注文したお団子を食べながら、女学校での話題を一通り話を終える。次は雛菊の番だ。
「婚儀はいつなの?」
「二ヶ月後よ。今は花嫁修業の真っ最中。だけど、ずっと家にいるのも息が詰まるから抜け出してきちゃった」
「そうなの。でも、息抜きも必要よね」
絃乃が同意すると、苦笑いが返ってきた。花嫁修業も大変そうだ。
「だけど、絃乃さんとこうしてお話ができてよかったわ。思ったより元気そうだし」
「それはこちらの台詞よ。雛菊」
「言われてみれば、そのとおりね」
ふふ、と二人で笑い合う。この感じも久しぶりだ。まるで時が戻ったみたいだった。
(人妻になるのは家の責任を背負っていくということ。私はともかく、百合子もいずれそうなるのよね)
つい感慨深くなってしまうのは歳のせいだろうか。女学校卒業までが自由にできる期限だ。タイムリミットは長いようで短い。
別れ際が名残惜しく感じてしまうのは、自分だけではないはず。
けれど、いつもまで引き留めているわけにもいかない。雛菊は家に戻り、婚儀のための準備が山ほどあるはずなのだから。
「じゃあ、雛菊。元気でね」
「ええ。絃乃の顔が見られてよかったわ。またね」
柳の下で、彼女の背が小さくなるまで見送る。まっすぐに帰る雛菊は背筋をピンと伸ばし、落ち着いている。いきなりの退学で心配していたが、なんとか大丈夫そうだ。
(さて。私も帰ろう……)
数歩歩いたところで、ふと、袂に違和感を覚える。
腕を持ち上げたり下げたりしてみる。かすかな重みがして袂の中を探ると、結び目のある手紙が出てきた。
「付け文……? 一体、いつかしら」
朝にはなかった。だとすれば、帰り道のどこかで、ということになる。とりあえずは中身の確認からだろう。慎重に折りたたんだ紙を開き、絃乃は文字を二度読み返す。
(こ、これは……)
葵からの手紙だ。文字が少々いびつなのは急いで認めたせいか。
「二人きりで相談したいこと……」
指定されたのは廃寺となった場所だ。確かに、あそこなら人目にもつかないし、内緒話にはうってつけだろう。
しかし、待つと書かれた時刻はもうすぐだ。今すぐ行かなければ間に合わない。
(詠介さんに相談する時間もない……どうする?)
だが、この機会を逃してはならないと直感が訴えている。罠の可能性もある。けれど、もしそうでなかったら。葵が本当にこの手紙を送ってきたのだとしたら。
もう二度と会えない可能性もあるのではないか。そう思ったら、いても立ってもいられなくて絃乃は急いで踵を返した。



