これは願望が夢になったのではないだろうか。そうでないと、説明がつかない。
詠介が妹としてではなく、一人の女性として慕ってくれている。そんな奇跡みたいなことが本当に起きたなんて、にわかには信じられない。
あの夜、抱きしめられた感触も少しずつ薄れている。
まるで砂をすくった後のように、強く残っていた感触や香りもぼんやりとしていく。時折、あれは本当に現実だったのかと疑いたくなる。
「……ごめんなさい。ちょっと頭が整理できていなくて」
「こちらこそ配慮が足りませんでした。いきなりこんな話をされて、動揺なさるのは無理もないです」
「いえ、あの……違うんです」
「というと?」
秘密を抱えているのは詠介だけではない。
協力するならば、こちらも話さなければならない。そうでなければフェアではない。
絃乃は心を落ち着けようと、細く息を吐き出した。
「……詠介さんには本当のことを伝えたいと思います。……私には前世の記憶があります。転生前はこの乙女ゲームをプレイしていました。要するに『紡ぎ紡がれ恋模様』のストーリーはある程度、知っています」
一息に喋り終えると、詠介は困ったように笑った。
「……なんとなく、そんな気はしていました」
「ちゃんと言い出せなくて、ごめんなさい。こんなことを言っても、信じてもらえると思わなくて」
「……いえ、僕が逆の立場でも真実を伝える勇気はなかったと思います」
「でも謎解きルートは未プレイだったんです。そこで命が尽きて、気づいたら絃乃に生まれ変わっていて」
彼はゲーム案内役で、自分はヒロインの友人。
本来、関わりあいがなかったはずの間柄だ。けれど、二人で協力して、百合子の恋を影ながら見守ってきた。
(一人じゃない。二人ならきっと、どんな困難だって乗り越えられる)
敵地に挑むならば、情報は多いに越したことはない。
「答えられる範囲でいいんです。詠介さんの知っていることを教えてください」
「……百合子さんが葵くんを選んだ場合、彼にまつわる謎を解く必要があります。まず、葵くんが記憶を取り戻します。次に、双子の姉の様子を見に行くところを、百合子さんに目撃されます。そこで面識を持った彼女と何度か出会い、話す中で徐々に心を開いていくんです」
ここまでは大方、想像どおりだ。問題はこの後だろう。
「連続失踪事件で、絃乃さんは行方をくらませます。ただ、事前に葵くんの好感度をある程度あげていれば、それ自体は防げるんです。そして、百合子さんと力を合わせ、六年前の謎の真相を追い、真犯人に近づいていくというのが大まかな流れです」
詠介が妹としてではなく、一人の女性として慕ってくれている。そんな奇跡みたいなことが本当に起きたなんて、にわかには信じられない。
あの夜、抱きしめられた感触も少しずつ薄れている。
まるで砂をすくった後のように、強く残っていた感触や香りもぼんやりとしていく。時折、あれは本当に現実だったのかと疑いたくなる。
「……ごめんなさい。ちょっと頭が整理できていなくて」
「こちらこそ配慮が足りませんでした。いきなりこんな話をされて、動揺なさるのは無理もないです」
「いえ、あの……違うんです」
「というと?」
秘密を抱えているのは詠介だけではない。
協力するならば、こちらも話さなければならない。そうでなければフェアではない。
絃乃は心を落ち着けようと、細く息を吐き出した。
「……詠介さんには本当のことを伝えたいと思います。……私には前世の記憶があります。転生前はこの乙女ゲームをプレイしていました。要するに『紡ぎ紡がれ恋模様』のストーリーはある程度、知っています」
一息に喋り終えると、詠介は困ったように笑った。
「……なんとなく、そんな気はしていました」
「ちゃんと言い出せなくて、ごめんなさい。こんなことを言っても、信じてもらえると思わなくて」
「……いえ、僕が逆の立場でも真実を伝える勇気はなかったと思います」
「でも謎解きルートは未プレイだったんです。そこで命が尽きて、気づいたら絃乃に生まれ変わっていて」
彼はゲーム案内役で、自分はヒロインの友人。
本来、関わりあいがなかったはずの間柄だ。けれど、二人で協力して、百合子の恋を影ながら見守ってきた。
(一人じゃない。二人ならきっと、どんな困難だって乗り越えられる)
敵地に挑むならば、情報は多いに越したことはない。
「答えられる範囲でいいんです。詠介さんの知っていることを教えてください」
「……百合子さんが葵くんを選んだ場合、彼にまつわる謎を解く必要があります。まず、葵くんが記憶を取り戻します。次に、双子の姉の様子を見に行くところを、百合子さんに目撃されます。そこで面識を持った彼女と何度か出会い、話す中で徐々に心を開いていくんです」
ここまでは大方、想像どおりだ。問題はこの後だろう。
「連続失踪事件で、絃乃さんは行方をくらませます。ただ、事前に葵くんの好感度をある程度あげていれば、それ自体は防げるんです。そして、百合子さんと力を合わせ、六年前の謎の真相を追い、真犯人に近づいていくというのが大まかな流れです」



