馴染みの甘味処を通り過ぎようとしたところで、小紫女学校指定の藤紫の袴が見えた。
手前の席に座っている女性の頭には大ぶりの青いリボン、その正面には若い男が座っている。異質な光景に気になって近づくと、男が口を開く。
「それじゃ、話をまとめますと。不審な物音がして起き上がったあなたは、怪盗鬼火の去っていく足音を聞いたと」
「ええ、そういうことになります」
可愛らしい声で頷く彼女の言葉に、男がふむふむと頷く。そのくたびれたスーツは記憶にある背中と重なった。
「篝さん……?」
絃乃が名前を呼びかけると、男が振り返る。不思議そうな顔から一転、握りしめていた鉛筆をマイクのように向ける。
「ああ、百合子お嬢さんのお友達の! そうか、お嬢さんは小紫女学校に通っているんでしたね」
「白椿絃乃です。篝さんは何を?」
「何って、取材ですよ。このお嬢さんのお宅に怪盗が現れたと聞いたので、詳しい話を聞いていたところです」
篝の真向かいに座っていた女学生は二人を見比べ、こてんと首を傾けた。
「お姉様は、篝様のお知り合いなのですか?」
「え、ええ。まあ」
「そうでしたの。わたくし、世間知らずで……。言われるままについてきてしまって、不安でしたの。お姉様の知人なら心配は無用ですわね」
「そ、そうね。この人は大丈夫よ」
乙女ゲームの攻略対象の一人だ。ある意味、身元はしっかりしている。
おとなしそうな下級生はおもむろに立ち上がり、ぺこりと頭を下げた。髪を結わえていたリボンが一緒にお辞儀する。
「それでは、わたくしはこれで。大福、ごちそうさまでした」
「ああ。取材のご協力、ありがとう」
「お姉様もごきげんよう」
律儀に挨拶をしていく下級生を見送り、絃乃は篝を見下ろす。その視線を受けて、彼は気まずいように顎をさすりながら、視線を横にそらす。
「俺って、そんなに危ないやつに見える?」
「危ないというか、格好が……その、うさんくさいですよね」
「うぐ。意外とハッキリ言うね。これ、結構気に入っているんだけどな。上司のお古だが、着心地は抜群なんだ」
それはゲームの台詞と同じ言い訳で、思わず小さく笑うと、篝が苦笑した。
今世で会うのは二回目だが、前世での思い出があるからか、昔なじみと会ったような気分だ。篝もヒロインの友人と知っているからか、砕けた雰囲気になっている。
「ここで会ったのも何かの縁だ。よければ、ごちそうするよ」
手前の席に座っている女性の頭には大ぶりの青いリボン、その正面には若い男が座っている。異質な光景に気になって近づくと、男が口を開く。
「それじゃ、話をまとめますと。不審な物音がして起き上がったあなたは、怪盗鬼火の去っていく足音を聞いたと」
「ええ、そういうことになります」
可愛らしい声で頷く彼女の言葉に、男がふむふむと頷く。そのくたびれたスーツは記憶にある背中と重なった。
「篝さん……?」
絃乃が名前を呼びかけると、男が振り返る。不思議そうな顔から一転、握りしめていた鉛筆をマイクのように向ける。
「ああ、百合子お嬢さんのお友達の! そうか、お嬢さんは小紫女学校に通っているんでしたね」
「白椿絃乃です。篝さんは何を?」
「何って、取材ですよ。このお嬢さんのお宅に怪盗が現れたと聞いたので、詳しい話を聞いていたところです」
篝の真向かいに座っていた女学生は二人を見比べ、こてんと首を傾けた。
「お姉様は、篝様のお知り合いなのですか?」
「え、ええ。まあ」
「そうでしたの。わたくし、世間知らずで……。言われるままについてきてしまって、不安でしたの。お姉様の知人なら心配は無用ですわね」
「そ、そうね。この人は大丈夫よ」
乙女ゲームの攻略対象の一人だ。ある意味、身元はしっかりしている。
おとなしそうな下級生はおもむろに立ち上がり、ぺこりと頭を下げた。髪を結わえていたリボンが一緒にお辞儀する。
「それでは、わたくしはこれで。大福、ごちそうさまでした」
「ああ。取材のご協力、ありがとう」
「お姉様もごきげんよう」
律儀に挨拶をしていく下級生を見送り、絃乃は篝を見下ろす。その視線を受けて、彼は気まずいように顎をさすりながら、視線を横にそらす。
「俺って、そんなに危ないやつに見える?」
「危ないというか、格好が……その、うさんくさいですよね」
「うぐ。意外とハッキリ言うね。これ、結構気に入っているんだけどな。上司のお古だが、着心地は抜群なんだ」
それはゲームの台詞と同じ言い訳で、思わず小さく笑うと、篝が苦笑した。
今世で会うのは二回目だが、前世での思い出があるからか、昔なじみと会ったような気分だ。篝もヒロインの友人と知っているからか、砕けた雰囲気になっている。
「ここで会ったのも何かの縁だ。よければ、ごちそうするよ」



