玄関すぐ横の書生部屋で、葵は眉間を険しくしていた。
現在、佐々波家の書生は葵一人だ。そのため、数人で使う部屋も一人きりで使わせてもらっていた。詠介は何かと気にかけてくれ、勉学に集中できるようにと配慮してくれる。
(姉さん……もう俺のことは忘れて、早く楽になって)
女学生になった姉は、昔のおてんばだった様子はなりを潜めて、淑女らしく成長していた。そそっかしい面は変わっていないようだったが。
前世では仕事に疲れて家事は二の次、という体たらくだったが、今世では何か問題を起こしていないだろうか。一度考え出すと、あれもこれも心配になってくる。
(これが弟の性ってやつか……)
何の因果か、生まれ変わっても家族という絆で結ばれてしまった姉。
喜んでいいのか、悲しんでいいのか、わからない。
(確かに、死ぬ前にもう一度会いたいと願った――だけど、転生先で出会うことになるなんて誰が想像するんだよ。しかも、また姉と弟だし)
どうせなら兄のほうが……いや、今はそんなことよりも。
あいつに見つかるわけにはいかない。彼女を守るためにも、離れなければ。
(家に行ったのは失敗だったな……)
あの日、あの時間、計算されたように出会ってしまった。あれは必然だったのだろうか。
前世からの再会を果たした姉は元気そうだった。それだけが救いだった。
机の引き出しを開け、その奥に隠してある布を見つめる。布の下をめくることはせず、気持ちを押し隠すように引き出しを元に戻した。
現在、佐々波家の書生は葵一人だ。そのため、数人で使う部屋も一人きりで使わせてもらっていた。詠介は何かと気にかけてくれ、勉学に集中できるようにと配慮してくれる。
(姉さん……もう俺のことは忘れて、早く楽になって)
女学生になった姉は、昔のおてんばだった様子はなりを潜めて、淑女らしく成長していた。そそっかしい面は変わっていないようだったが。
前世では仕事に疲れて家事は二の次、という体たらくだったが、今世では何か問題を起こしていないだろうか。一度考え出すと、あれもこれも心配になってくる。
(これが弟の性ってやつか……)
何の因果か、生まれ変わっても家族という絆で結ばれてしまった姉。
喜んでいいのか、悲しんでいいのか、わからない。
(確かに、死ぬ前にもう一度会いたいと願った――だけど、転生先で出会うことになるなんて誰が想像するんだよ。しかも、また姉と弟だし)
どうせなら兄のほうが……いや、今はそんなことよりも。
あいつに見つかるわけにはいかない。彼女を守るためにも、離れなければ。
(家に行ったのは失敗だったな……)
あの日、あの時間、計算されたように出会ってしまった。あれは必然だったのだろうか。
前世からの再会を果たした姉は元気そうだった。それだけが救いだった。
机の引き出しを開け、その奥に隠してある布を見つめる。布の下をめくることはせず、気持ちを押し隠すように引き出しを元に戻した。



