梅雨の晴れ間は、まぶしいほどの日差しが降り注ぐ。
(今日も空振りだった……)
久しぶりの晴天だったので、詠介と出会えるかと期待して賀茂川に足を運んだが、探していた人影は見当たらなかった。
ここ数日の鬱屈を晴らすべく甘味処に寄ると、店員が申し訳なさそうに言った。
「すみません、ほとんど満席状態でして……相席でも大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です」
「よかった。では、こちらの席でお願いします」
案内された席には二人用の席で、向かい側には着物姿の男が座っていた。
「お客さん、すみません。こちら、相席になります」
「ああ、どうぞ。……って、絃乃さん?」
「さ、佐々波さん!?」
葛餅とお茶を堪能していたのは、青空を彷彿とさせる縹色の着流し姿の詠介だった。
彼は驚いた顔を見せたが、すぐに笑顔で前の席に座るように手で示す。
「奇遇ですね」
「そ……そうですね」
あたふたとしながら着席すると、店員がすかさず営業スマイルを向ける。
「ご注文はお決まりですか?」
「あ……わらび餅を」
「かしこまりました」
詠介はお茶を一口飲み、ほっと息を吐き出す。
「こうしてお目にかかるのは久しぶりですね」
「……お元気でしたか?」
「ええ。ご覧のとおりです。絃乃さんもお変わりないようで、よかったです」
天井に取り付けられた扇風機の風が、緊張していた首元をさらりとかすめていく。楽しい話題が見つからず、詠介が葛餅を口に運ぶ様子をジッと見つめてしまう。
「……あまり見つめられると、照れてしまいますね」
「す、すみません! つい不躾に見つめてしまいました……」
「いえいえ。お気になさらず」
赤いお盆に載せたわらび餅が運ばれてきて、ことりとお皿が机に置かれる。
「……いただきます」
大きく切り分けられたわらび餅を落ちないように注意し、ぱくりと頬張る。
(今日も空振りだった……)
久しぶりの晴天だったので、詠介と出会えるかと期待して賀茂川に足を運んだが、探していた人影は見当たらなかった。
ここ数日の鬱屈を晴らすべく甘味処に寄ると、店員が申し訳なさそうに言った。
「すみません、ほとんど満席状態でして……相席でも大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です」
「よかった。では、こちらの席でお願いします」
案内された席には二人用の席で、向かい側には着物姿の男が座っていた。
「お客さん、すみません。こちら、相席になります」
「ああ、どうぞ。……って、絃乃さん?」
「さ、佐々波さん!?」
葛餅とお茶を堪能していたのは、青空を彷彿とさせる縹色の着流し姿の詠介だった。
彼は驚いた顔を見せたが、すぐに笑顔で前の席に座るように手で示す。
「奇遇ですね」
「そ……そうですね」
あたふたとしながら着席すると、店員がすかさず営業スマイルを向ける。
「ご注文はお決まりですか?」
「あ……わらび餅を」
「かしこまりました」
詠介はお茶を一口飲み、ほっと息を吐き出す。
「こうしてお目にかかるのは久しぶりですね」
「……お元気でしたか?」
「ええ。ご覧のとおりです。絃乃さんもお変わりないようで、よかったです」
天井に取り付けられた扇風機の風が、緊張していた首元をさらりとかすめていく。楽しい話題が見つからず、詠介が葛餅を口に運ぶ様子をジッと見つめてしまう。
「……あまり見つめられると、照れてしまいますね」
「す、すみません! つい不躾に見つめてしまいました……」
「いえいえ。お気になさらず」
赤いお盆に載せたわらび餅が運ばれてきて、ことりとお皿が机に置かれる。
「……いただきます」
大きく切り分けられたわらび餅を落ちないように注意し、ぱくりと頬張る。



