新居。

新居と呼べるのだろうか?
古びたアパート、
ブカブカの畳。 六畳二間。

カビ臭い押し入れ。


一瞬にして
新地への期待感は消滅する。

しかも、置き去りにしてきた
祖母と交換に


ケバく背の低いぽっちゃり型の女、園児くらいの男の子と乳飲み子。

心の中で叫んだ。

《なんやねん!誰やねん!もう大阪帰りたい!》


父が私に言った。

『冴のお母さんやで。逢いたかったやろ』と。



思った。

《言ってへんし、思うてないゎ!》

でも何も言えなかった。
また泣いた。
母であろうケバい女が私の頭をなでながら

『冴、逢いたかったよ』

傍らに抱える乳飲み子が鳴くのを見て
泣くのを止めた。