ここは1990年大阪府。

私こと村崎冴 <むらさきさえ> は
父、村崎忍と祖母、村崎イツの3人暮らし。

どちらかとゆうと溺愛されて育てられた。


父がなぜ離婚して私を引き取ったのかは
理由は知らない。
祖母も触れない。
理由は知らない。
母の事を物心付いた時から聞いてはいけない気がした。


なぜなら祖母の顔が曇るから。

祖母の雲行きよりも世の中の雲行きの方が険しくなってゆくことを
私はまだ知らない。

ある日、学校から家に帰ると
自宅が神社かと思わせるように
赤いお札が張り巡らせていた。

意味は解らなかった。

だけど、父が言った。

『もうしまいや、九州行くで。
お母さんに会いたいやろ?』


村崎冴、14歳。

何も知りたくない。何も世の中の事に興味がないまま、
顔の曇ったスーツ男が
赤いお札を家具に張る姿を
黙って無気力なまま見ていました。