3時間目に急な教室移動があって、F組の前を通った。



F組の教室をのぞくと、後ろの席でメガネをかけて真剣に黒板を見つめている莉生がいる。



そういえば、今朝、コンタクトが入らないって騒いでたっけ。



莉生の姿を見つけたうちのクラスの女子たちが「わあっ」っと歓声をあげる。



「ねえ、水島くん、眼鏡かけてる!」



「水島くんの破壊力、すごっ!」



「クラスの全女子、メガネかけてる水島くんに魂ぬかれちゃってるっ‼」



みんな、メガネをかけてる莉生にそわそわしている。



莉生の黒い瞳と黒髪のさわやかな雰囲気に、黒いフレームの眼鏡がすごくよく似合ってて、メガネのCM見てるみたい。



さすが、莉生。



莉生は廊下の喧騒を気にも留めずに、真剣に黒板に見入っている。



でも、ちょっと意外。



莉生が真面目に授業を聞いてるとは、思わなかった。



居眠りしたり、ぼーっとして授業を受けているんだと思ってた。



「水島くんって、全教科トップで入学したんでしょ?」



「あの爽やかで甘い瞳で勉強教えてもらったら、絶対、成績あがるのにっ!」



「むしろ、口説かれたい‼」



あちらこちらから、そんなひそひそ声が聞こえてくる。



「すごいねえ、水島くんって、息してるだけで推されちゃうんだねっ」



あゆみちゃんが目を丸くして驚いている隣で、動きをとめる。



んん?



……莉生が、全教科でトップ?