「……」


服を着替えたあたしが向かった先は、冬哉の部屋の前。

ドクドクとうるさい心臓を落ち着かせるように、大きく深呼吸する。


『なっちゃんに本当のことを話したって、橘くんに伝えておこうか?』


そう言ってくれたはるかの提案を、大丈夫と断った。


だって、自分で伝えたい。


鈍くて沢山傷付けて『ごめんね』も、やっと気付くことが出来た自分の気持ちも。


「……よし」


一度小さく呟いたあたしは、意を決してドアをノックしようとした──けど。


ゴンッ!


「でっ……!!」


鈍い音と同時に、額と鼻に感じた痛み。


「は?夏海!?」


その場にしゃがみ込み、顔を押さえて悶絶するあたしに声をかけるのは……冬哉。


まさかノックしようとしたタイミングで、冬哉が出てくるなんて。

タイミング悪すぎでしょ……。


思わぬハプニングに出鼻を挫かれ、物理的な痛みも合わさって、既に泣きそう。

なかなか立ち上がれずにいると、


「ごめん、大丈夫?」


冬哉もしゃがんで、あたしの顔を覗き込んできた。