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「ありがとうございました!」


ICカードで運賃を払ってバスを降りたあたしは、小走りで家へと向かう。

あれから、はるかと思いのほか長く過ごしてしまって、気付けばもう暗くなってしまっていた。


まさかはるかが、あたしに冬哉への気持ちを自覚させるため、わざと嘘をついていたなんて……。


『だってなっちゃん、これくらいしないと絶対気付かないでしょ? 見てるこっちがイライラするくらい、鈍いんだもん』


あの後、はるかに言われた言葉を思い出して、ずーんと沈む。


ご指摘のその通り、はるかのことがなかったら、あたしはきっとまだ自分の恋心に気付いてなかったと思う。

本当に呆れるくらい鈍感な自分。


それに、はるかに他に好きな人がいたことも、全然気付いていなかった。


冬哉があたしにだけ優しいとするならば、はるかの好きなひとはその逆。

みんなに分け隔てなく優しいひとだから、相手の気持ちが読めなくて。

だからあたしと冬哉を見ていて、羨ましいと思っていた……らしい。