「なーっちゃん、どうしたの?」


ポンッと背中を叩かれて、ビクッとする。

自分の机に頬杖をついて、ぼーっとしていたあたしの顔をひょっこり可愛らしく覗くのは、はるか。


「え、別にどうもしないよ」

「そう? 何か今日元気なさそうだけど」

「そんなことないよ」


心配してくれるはるかに、ニコッと笑ってみせる。
 

『元気がないことなんてない』と言いながら、本当は自分でも気持ちが沈んでいることに気付いている。

それは……。


「山下さん!」


突然大きな声で名前を呼ばれて、はるかに向けていた顔をあたしは声の方へと向けた。

すると、教室の入り口の前にはクラスメートの女の子。


そしてその横には……冬哉が立っていた。


冬哉と目が合った瞬間、ドキッと鼓動が跳ねる。

何で……って思うよりも早く、


「橘くん呼んでるよ?」

「あ、うん……」


はるかに促され、あたしは席を立った。