冷徹王子様は、あたしだけに甘い恋をする。



「あっ……ごめん」


自分自身びっくりして、慌てて掴んだ手を離す。

その瞬間、俯いた拍子に見えてしまった。


冬哉のスマホにはるかからの、『今日はごめんね』という、メッセージ。

脳裏にはるかの顔が浮かんで、ズキンッと胸が痛んで、あたしは冷静を取り戻す。


何やってるんだろう……。


「あ……話はこれだけだから!今日はほんとにありがとうね!」


不意に何故だか泣きそうになってしまって、自分が今ちゃんと笑顔をつくれているのか分からない。


胸の中から溢れそうになる、正体不明の感情。

苦しくて悲しくて、気付いちゃいけないと本能が警告していて。


あたしはそれから逃げるように「おやすみ」と、部屋を出ようとした──のに。


「えっ……」


グイッと腕を引かれ、そのまま背中から倒れる。

ボスッと鈍い音を立てて背中と頭を打ち付けたのに痛くない……のは、倒れた場所がベッドの上だから。


びっくりして目を見開く。

あたしの両手を押さえつけるようにして、覆いかぶさているのは──。


「と、冬哉……?」