「……だから、返事する前に開けんなって言ってんじゃん」
「へへ……」
今日はベッドの上に、仰向けに寝転んでいた冬哉。
顔の上に乗せていた本を持ち上げ、いつもと変わらない対応に、ちょっとだけホッとする。
「もしかして寝てた?」
「いや別に。で、どうした?」
「あ、うん、あのね……」
いつもと少し違うのは、あたしの方。
それに冬哉は気付いたのか、耳に付けていたイヤホンを外すと、静かに問いかけて身体を起こした。
「今日は……助けてくれて、ありがとう。それから追試の勉強のことも、ありがとう」
冬哉の目の前、ベッドの前に正座して、ペコッと頭を下げる。
「何だよ、急に改まって」
「いや、ちゃんとお礼言えてなかったなって思って」
『改まって』と言われると、急に恥ずかしくなってきて、あたしは「あはは」とごまかすように笑った。すると、
「お礼って、そんだけ?」
「え?」
真っ直ぐ、あたしを見つめる冬哉。



