「……み、夏海! いつまで寝てるの!? 遅刻するわよ!!」
朝からけたたましいママの声に、パチっと目を開く。
突然妨害された睡眠。
もう少し寝ていたい……なんて、言葉にする余裕もなかった。
──7時52分。
「……うわっ! 何で起こしてくれなかったの!?」
「起こしたわよ。でも夏海が起きなかったんでしょ」
スマホに表示された時刻を見て、飛び起きるあたし。
ママは呆れたようにため息をついて、そのままバタンと部屋のドアを閉めて出て行った。
山下 夏海(やました なつみ)、16歳。
サラリーマンのパパと専業主婦のママがいるひとりっ子で、ごくごく一般家庭の高校2年生。
勉強はどちらかといえば苦手だし、得意なスポーツがあるわけでもなく、特に長けた所のないあたしは、それこそ普通の公立高校へ通っている。
……いや、受験は少し頑張ったかな。