「おーい、なっちゃん!」

「あっ、ごめん……」


自分でも気づかぬ間に遅れていて、ふたりとの距離が広がっていた。

はるかに呼ばれて急いで駆け寄ると、


「ボーっとしてんじゃねーよ」

「なっ……!」


ため息混じりに白い目で言われ、あたしは冬哉を睨みつける。


なによ、あんな怖い顔して怒ってたくせに!
まんざらでもない……っていうか、はるかのこと気に入ってんじゃん!

──なんて、はるか本人を目の前に言うわけにはいかなくて、あたしは言葉を飲み込んだ。




「じゃあ俺、自販機寄ってくから」

「うん、またね!」


冬哉があたし達から離れたのは、学校に着いてから。

玄関口で靴を履き替え、ニコニコと手を振るのははるか。
あたしはというと、ムスッとした表情で冬哉を見送った。


「あれ、なっちゃん何か怒ってる?」

「え、ううん!全然!」


パッといきなり振り返ったはるかに指摘されて、あたしは慌てて首を振る。

怒ったり……は、していない。
ただ、冬哉に悪いことをしたと、謝ろうと思っていたから拍子抜けしただけ。


「……なら、良かった」


あたしの返事に、はるかはホッとした様子で胸を撫でおろす。