「もしかして冬哉、本当に男の人が好きとか……?」

「ふざけんな」


密かな噂をぶつけてみると、ペシッと軽いチョップが降ってきた。


「いったーい! でも本当にこういう噂が流れてるんだよ?違うならちゃんと払拭しておいた方がいいよ! はるかすごい良い子だし、可愛いし、絶対冬哉とお似合い……」


弾丸のように喋っていた言葉の途中。

冬哉は急にジリジリとこっちに近付いてきて、その威圧感に後ずさるあたしは、壁に背中をぶつけた。

それでも尚、あたしに近付く冬哉。


「な、なに……」


気付けば目の前に冬哉の顔があって、思わずドキッとしてしまう。

子どもの頃から見慣れてはいるけれど、改めてこうして間近で見ると、やっぱり綺麗な顔立ちをしていて、カッコイイ。

てかまつ毛とか男のくせに長すぎでしょ……なんて、思っていると、


「それ……」

「え?」

「他の女と連絡とれとか、お似合いだとか、マジで言ってんの?」


いつになく真剣で……怖い顔。


「う、うん……。はるかなら親友だし……ふたりが上手くいってくれたら、あたしも嬉しいな……って」

「……」

「〜もう、そんな顔しないでよ!」


何かを責めるような表情で、じっと見つめられたあたしは耐えきれなくなり、冬哉をドンと突き飛ばした。