冷徹王子様は、あたしだけに甘い恋をする。


そのまま大したリアクションもなく、自室のある二階へと上がろうとする冬哉を、


「あっ……待ってよ!」


あたしは腕を掴んで引き止めた。


「スマホ貸して!」

「あ?」

「貸して!」


強引に手を差し出すと、冬哉は不服そうな顔をしながらも、素直にポケットからスマホを取り出してくれた。

それをあたしは奪い取るようにして、自分のスマホも片手にトークアプリを開く。


「何してんだよ」

「んー……ちょっと待って」


一週間ここでお世話になることも大事なことなのだけど、それ以上に大事な要件が今日のあたしにはあるのだ。

でも、それをバカ正直に話したって、きっと冬哉は聞いちゃくれない。

だから冬哉のスマホを拝借して、これをこうして……。


「はい、できた!ありがと!」

「?」


冬哉にスマホを返したあたしは、意味が分からないといった顔をする冬哉にふふふと微笑む。


「ね、冬哉。あたしの友達のはるかっていう子、分かる?」

「あぁ……いつも一緒にいる、あの子?」

「そうそう!」


なんだ。知ってくれているなら話は早い。