冷徹王子様は、あたしだけに甘い恋をする。


人の恥ずかしい昔話で盛り上がろうとするママ達に、声を張り上げた瞬間。


ガチャンッと玄関の鍵が開く音が聞こえて、入ってくる人の気配。


「噂をすれば帰ってきたかな?」

「あ、あたし行ってくる!」


逃げるようにあたしはリビングを後にして、玄関まで迎えにいった。

クスクスと笑い合うママ達の声が聞こえて、もしかしてこれは逆効果なんじゃないかと気付く。

だけどあの場にそのままいたって、きっと同じくからかわれるに違いない。



「……あ、来てたんだ?」

「あっ、うん! おかえり!」


リビングから出てきたあたしを見て、先に冬哉が声をかけてきた。


「おばさんも来てんの?」

「う、うん……。そうだ!あたし、来週からここに住ませてもらうことになったから!」

「……は?」

「ほら、うちのパパ手術するって言ってたでしょ?それでママが行くことになったんだけど、あたしがひとりになちゃうからって」

「ふーん……」


特に驚く様子や嫌がることもなく、薄い反応。

まあ、元々きょうだいみたいなものだから、こんなものなのかもしれない。